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抽象化するということはどういうことでしょうか?
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「抽象化」とは、物事や概念から具体的な情報を削ぎ落として、本質的な要素や共通する特徴を抜き出し、より簡素で普遍的な形で理解・表現することを指します。抽象化によって、特定の事例にとらわれず、より広範な状況や多様な対象に適用できる概念を得ることができます。
例えば、知識創造理論においても抽象化は重要なプロセスです。個別の経験や事例から特定の知識を得る際、すべての細かな要素を取り入れてしまうとその知識はその事例に限定されたものとなります。しかし、抽象化を行うことで、特定の状況を超えて適用できるような知識(例:ナレッジのフレームワークやプロセスのモデル)が構築されます。
また、知識創造において抽象化はSECIモデルの「内面化(Internalization)」にも関わりが深く、具体的な経験や暗黙知から抽出した共通要素を通じて個人や組織全体に内在化された普遍的な知識として蓄積する役割を果たします。
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抽象とは何でしょうか? 抽象概念との類似点、相違点は何ですか?
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「抽象」とは、具体的な対象や事象から特定の要素や性質を取り出し、本質的な共通部分を捉えることです。つまり、抽象化は、ある物事や現象に共通する特徴を抽出して、個別の詳細や具体的な情報を削ぎ落とし、簡素化するプロセスです。これにより、広範な事象に適用できる概念やモデルが得られます。
抽象は、日常の思考から科学的研究まで、幅広い場面で行われます。例えば、特定の色や形を「テーブル」として捉える時、あらゆる個々のテーブルに固有の形状やサイズ、素材といった要素を無視して「テーブルとは何か」という共通の特性(食べ物を置くための平らな面がある家具、など)に焦点を当てています。これにより、「テーブル」という抽象的なカテゴリが形成されます。
抽象と抽象概念には密接な関係があり、次のような類似点があります。
一方で、「抽象」と「抽象概念」にはいくつかの相違点もあります。
抽象はプロセス、抽象概念は結果
抽象は、具体的な事象や経験から共通の特性を抜き出す「過程」を指します。一方、抽象概念はその過程から生まれた「結果」であり、抽象化によって得られた概念そのものです。たとえば、個々の異なる行動から「正義」について抽象化する過程が抽象であり、その結果としての「正義」という概念が抽象概念です。
抽象概念は一定のイメージを持つ
抽象概念は、例えば「愛」「自由」「平等」といった形で、特定の概念としてのイメージや意味を持ちますが、抽象そのものにはそうした特定の意味やイメージはありません。抽象はどちらかというと概念を形成するための操作や技法を指します。
抽象概念は共有可能
抽象概念は、他者と共有し理解することが可能なものです。たとえば、「勇気」や「信頼」といった抽象概念は社会的に共有され、多くの人が共通の意味で理解します。一方で抽象のプロセスそのものは、個人が経験を通じて行うものであり、個別的な過程の中で理解が深まるものであるため、直接他者に共有するものではありません。