https://logmi.jp/business/articles/330927?fbclid=IwY2xjawFORoxleHRuA2FlbQIxMAABHeu7VT7uiE2uHKUsXhAwQXPU4f2nzuEfdEQsv89Iy9tbIuM-ThZkUI6gyA_aem_xztO5j4EyzU13yzg4ZvcdA
司会者:まずは、著者の中土井さんから書籍のダイジェストとして4年分の蓄積を10分で発表していただく時間を取りたいと思います。中土井さん、よろしくお願いします。
中土井僚氏(以下、中土井):よろしくお願いいたします。みなさま、初めまして。オーセンティックワークスの中土井と申します。
今回は、『ビジョンプロセシング――ゴールセッティングの呪縛から脱却し「今、ここにある未来」を解き放つ』という書籍の出版記念イベントにご参加いただきまして、ありがとうございます。まず10分ぐらいで、本書のポイントだけご紹介させていただければと思います。
先ほどご紹介いただきましたが、私はオーセンティックワークスという会社を(経営)しております。表立っては、U理論や成人発達理論を日本で紹介する活動をしているんですが、実際にはコンサルタントから始まって、コーチング、組織開発のファシリテーション、リーダーシップ開発のトレーナーとして、さまざまな活動をしています。
なので、どちらかというと現場に入って一人ひとりの内面の変容から外的な変革を作り出すお手伝いをしています。経営理論などを知的理解として提供させていただくというよりも、一人ひとりが実際に自分自身の内面と向き合い変化していくというのは、どんなプロセスで起きるのかをサポートさせていただく、そんなお仕事をしています。
そんな仕事の中で、いきなりその方の内面に踏み込むのはけっこう抵抗があったりします。なので、私は頭の理解をすごく大事にしておりまして、なんとなくモヤッとしていることだったり、何をどう考えたら良いんだろうということを考えていくお手伝いをさせていただいています。
2025年で、この仕事を始めて20年になるんですが、その中でいろんな対話を通してみなさまが「なるほどね」と言ってくださることを今回まとめたのが、この『ビジョンプロセシング』という書籍です。
中土井:ポイントをちょっとだけ紹介させていただきますと、**「結局のところ環境の変化が激しいとは、どういうことを意味するんだっけ?」**という(問い)が出発点になっています。今回のイベントのテーマで、書籍の帯にも書いていますが、「答えがないのにゴールを示すべきというジレンマ」が、私たち一人ひとりに根本的に問いかけられていることじゃないかなと思います。
VUCAとかBANIとか、いろんな言葉で言われていますが、環境の変化が激しいのって何を意味しているかというと、明確な目標や綿密な計画を立てたとしても、結果的に明日どうなるかわからないことがありますよね。その最たるケースが、コロナだったと思います。
昨今の政情不安を考えても、日本がすぐに戦争に巻き込まれることはないとしても、他国で起きている戦争によっていきなり起きた物価高が私たちの生活を直撃しているという話で言うと、決して他人事ではないなと思っています。なので、十年の計を立てるのは難しいので、3年ぐらいで考えようと言っていたのが、2000年になってからの話だったんです。
ですが、おそらく今は、3年後を考えるにしても、生成AIが代表するテクノロジーの変化も含めて、自信を持ってこうなると言える方ってけっこう少なくなってきているんじゃないかと思います。この環境変化が突きつける要件は、先行きが不透明過ぎて計画や目標を立てられませんということに加えて、勝ち筋が見えないということがある。
だからこそ、三人寄れば文殊の知恵とする必要があるよね、みんなで力を合わせましょうというふうに、環境が私たちに要件を突き付けています。ところが、人間の特性というのは、見通しの明るさや投資対効果、最近だったらタイパ、コスパとよく言われるように、やる前に勝ち筋が見えていないと、やる気が出ません。
「そもそもそれをやる意味はあるんですか?」という姿勢になってしまうことが、どんどん増えてきている風潮なのかなと思います。
中土井:その上、先行きが不透明だからこそみんなで力を合わせるしかないけど、会議を躍らせずに一枚岩になるためには同じ目的や目標が必要だよね、と言われたりもします。これって真っ向から対立するジレンマだなと思っているんですね。